営業マン蘇生の物語-おもしろい営業への道I-第六話
作成者 admin
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最終変更日時
2010年03月31日 08時52分
第六話「案件進捗技術との出会い」
京都での営業活動が7年を過ぎたとき、東京への異動を命ぜられた。「自分のスタイルが東京で通じるのか」という気持ちで東京に赴任した。拠点は城北営業所、豊島区・文京区・板橋区・練馬区・北区を管轄していた。当初の1年間は、板橋区の一部の地域を担当するテリトリーセールスとして、京都時代の新規中心と同様の営業活動を行った。この活動が直属マネージャーに評価され、2年目は、京都時代に憧れていた大手アカウント営業マンに抜擢された。
担当先はほとんどカストマーであり、城北営業所の売上・利益を支えている企業ばかりだった。気楽な新規から、失敗の許されない重要カストマーである。緊張しながらも張り切って、新担当先に訪問してみると、突然の解約話が相次いだ。わたしの前任者が、きめ細かいフォローをしていなかったところを競争相手がてぐすねひいて狙ってきたのである。「他社から魅力的な提案がでている。当社が使用しているゼロックスのコピー機(何十台)をまとめて、他社に切り替えることを検討している」というようなことを通告され、目の前が真っ暗になった。しかし、よく話を聞いてみると、決裁部門では競争相手の提案は評価されていたが、使用現場までは、競争相手は訪問していなかった。「逆転のシナリオは使用現場から声をあげさせるしかない」とわたしは思い、必死でたくさんのコピー使用現場を訪問した。行ってみると、現場には特有の事情があった。当社のカストマーエンジニア(修理担当のエンジニア)と協力して、現状の不満を聞き、より使いやすい改造を施したり、使用方法の説明会を開いたりして、現場の支持を固めていった。その上で当社から現場の問題解決も含めた提案を決裁部門に提出した。なんとか大型解約は止まり、逆に当社のシェアは拡大した。数ヶ月しばしば夢にまで出てきたお客さまの担当者とは、深い信頼関係ができ、わたしの異動時には送別会を開いていただけるような仲になった。きつかったが勉強になった数ヶ月だった。
わたしが案件進捗研修という営業教育プログラムに出会ったのはこの直後だった。この研修はその時わたしが置かれた状態にぴったりだった。当時痛切に感じていたことは、重要カストマーとの商談をどう進めていくのかということだった。新規のときは多少強引なこともできたが、重要カストマーとなるとそうはいかない。商談を受注に結びつけるためには、お客さまのなかのさまざまな部門の方との交渉・調整も必要であるし、商談期間も長期化する。また、扱う商品もコピー、ファクシミリ、J-Star(ネットワーク化された電子の机:今のPCとサーバーから構成されるクライアント・サーバーシステムの原型)と増え、複雑化していた。その企業との中長期的な企業対企業の関係を発展させながら、どう売上・粗利を維持・拡大していくかということが、わたしの営業上の課題だった。上記の解約話が収まったころ、営業教育部門から、「新任大手アカウント営業マン研修」参加連絡書が来た。わたしにとって新卒時代からの憧れだった職種の新任研修である。勇んで参加した。その研修のなかに案件進捗研修が組み込まれていた。わたしはここでも大きな収穫を得た。 この研修を一言で説明すると、「企業・団体・官庁などの組織体への営業活動のプロセスマネジメント手法」ということになる。「組織体からの受注を確実により早く達成するための営業活動の進め方を習得する研修」とも言い換えることができる。個々の面談技術のトレーニングは第二話の面談技術だが、案件進捗研修は「営業活動の確実・迅速な進捗のために次の一手をどう考えるか」ということにフォーカスしている。比較的小規模案件では、意思決定者との商談が短期的に進行するケースが多く、面談技術が営業活動の成功の主要因となるが、大規模案件となると、複雑な商談を数多く乗り越えて受注にたどりつくことが多い。ここでは、個々の面談技術はもちろんのこと、だれにどのタイミングでどうような面談を行うか、すなわち「次の一手」を的確にプランニングしてどう実行していくかということが営業活動の成功に大きな影響を及ぼす。案件進捗研修では、この「次の一手」を導くために5つの視点を提供している。
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営業活動全体に影響を及ぼす要因を幅広く検討する
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お客さまのニーズ(組織としてのニーズと面談者個人のニーズ)をしっかり把握する
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意思決定ルートと主要な影響者を捉える
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営業プロセス全体と重要成功要因となる営業上の重要イベントを捉える
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重要イベント達成のための訪問目的を設定し活動する